食いっぱぐれない職業選択 ~乗るしかない、このビッグウェーブ(第四次産業革命)に~

学生、異星人を教育す

 

イーツ
イーツ

イーツ(異星人)です! パートナーであるマナトさん(高2)に地球のことをあれこれ教わっています!

今日のお話は「第四次産業革命」! 四回も革命を起こすなんて、地球人はポテンシャルが高すぎますね!

マナトさんはこの産業革命の波に乗ることが自分の将来の安定に繋がると教えてくれました! 一体どういうことなんでしょう。

 

成功のコツは、なんでもいいから将来キそうななんらかの分野を極めること!

なぜなら、アメリカのGAFA(ガーファ)=「検索エンジンのGoogle」「iPhoneのApple」「ソーシャルメディアのFacebook」「通販サイトのAmazon」はそうやって邁進してきたからだ!

 

「……悪い。もう一度名前聞かせてもらってもいい、ですか」

今日から同室という二年寮への入寮日、マナトは宙にぷかぷか浮かぶクラゲに失礼を承知で名を聞いた。

初対面時に名前を聞いた折、その発音が地球語とは思えないほど難解で、聞き取ることができなかったからだ。

「あ、はい! もしかして僕の名前、この国の言葉ではわかりにくかったでしょうか。ええと、では……イーツ。イーツです。そう呼んでください」

というわけで「王冠っぽいものを頭に乗せたつぶらな瞳のクラゲ状生物」の呼称は「イーツ」でファイナルアンサーとなった。言い様からして、こちらが呼びやすいよう呼び名を変えてくれたのだろう。なんて臨機応変に長けた優しい生物なのだろうか。マナトは普通に感動した。

「じゃあ、イーツさん……改めてオナシャス」

「はい! あ、僕のことはどうか呼び捨てで! これからお世話になるのですし」

「……イーツ」

「ええ! どうぞよろしくお願いしますね!」

小学生かな? という素直さだった。

「ええと。今日から同室なわけだけど、なんか用意しといた方がいいものとかある……ありますか。水が入った洗面器とか」

「いえ、この星であれば空気中の水分だけで事足るので大丈夫です。お気遣いありがとうございます。あと、丁寧語じゃなくていいんです。楽にしてください。これからお世話になる同級生なのですから」

「はあ」

それは結構なことである。以降ふたりは、互いに荷物を解きながら生活する上でのすり合わせを進めていった。暑いのは平気か。寒いのは。睡眠時間はどれくらいか。暗くても大丈夫か。摂取してはいけない食べ物は。飲み物は。アンタの荷物ア○ゾンの箱めっさ多いのどういうこと。

「まず……何か聞いておきたいこととかある?」

荷解きが一段落した夕食前、何からどうやって打ち解けていけばいいかわからないマナトは、こうなったら全部向こうに任せようと交渉の主導権を譲った。

聞いてから気付いたが、マナトの方こそ彼がいた惑星の文明レベルを知らない。こうしてサクッと地球に来訪するくらいだから、科学にしろ魔法にしろあらゆる面で地球より発達しているのだろうし、本来であればそういうことをまず聞いておくべきだったのかもしれない。

(まあ最初から質問攻めってのもウザイだろうし、それはおいおいかな……)

地球人同士と違い、初期の齟齬なく理解の段階を踏まねばならない異星間交流は、手間と熟成が全てである。

そういう手順を知っていくのも俺に課された社会勉強だな、と思っていると、「そうですね」と考え込んだイーツが、つぶらな瞳で、

「マナトさんの将来を夢を聞いてもいいですか?」

と聞いてきた。

「俺の?」

「はい。この星ではどのような職業、どのような選択、どのような行動が将来的、恒久的な幸福を呼び込むかを知りたいのです」

宙空をふよふよ漂うクラゲは、なるほど、地球人類のことを学びに来たという当初の目的を殊の他主軸に据えているようだった。

不意に、自分はこんなに勉強熱心な異星人に地球のことを教えてあげられるんだろうかという不安がこんこんと湧き出てきた。学生だから社会のことにそれほど詳しいわけじゃないし、将来の夢だってまだない……。

「……強いて言えば、食いっぱぐれない職業に就きたいと思う程度だな」

「安定を求めているのですね。この星だとどんな職業が安泰なのでしょう。たとえば国家公務員とかでしょうか」

「今だとIT業界になると思う」

「IT業界……」

イーツがぱちぱちと瞬いた。

「ITってのは、Information Technology(インフォメーション・テクノロジー)、『情報技術』……デジタル情報を扱う技術の総称のことだな。――たとえばパソコンやスマホ、GoogleChromeやsafari、WordやExcel、Wi-Fiや4G、5Gの通信システム、そのセキュリティ。この辺は全部ITになる」

「IT」という言葉が示す界隈はマジで多岐に渡る。デジタルでできることがそれだけ多いことの証左だ。

「今は特に、あらゆるジャンルが効率化を求めて既存の業務をシステムに落とし込もうとしているところだから、技術者はどの界隈でも引く手数多なんだ。だから多分、俺もそれになると思う」

おそらく適当にその辺のベンチャー企業に就職することになるだろうとマナトは考えている。まるで他人事だが、やりたいことの遠景すら見えない今はそうとしか言いようがない。

「技術者は引く手数多……」

「ああ。『業務を機械に任せる』という最終到達地点はあらゆる職種において需要があるんだ。あとは単純に……2030年くらいか。産業革命が起きるんだよ。人類通算四度目の」

「産業革命! 四度目の! ではもう手馴れたものですね!」

いや、ひとりの人間が四回全部を体験したわけじゃ……とマナトは認識の齟齬を危ぶむ。もしかしてイーツは自分よりはるかに長い時間を生きている生物だったりするのだろうか。年齢とか聞いてもいいものなのかな。あとで教師に聞いてみよう。

「そんな来るとわかっている革命があるのに、ITについてなにも知らない、備えないってのもありえないだろ? だから、英語とか科学とか工学、数学、プログラミングは今のうちに覚えてしまいたいと思ってるよ」

「なるほど! でも、来るとわかっているお祭りなら、同じことを考えている人たちで界隈がすぐに飽和してしまいませんか?」

「どうだろうな。IT業界の人手不足は2030年になっても解消しないと言われてるし」

それどころか人手不足は増大するという意見もある。どちらにせよ、ITや科学技術に関する知識を自分で持っておくことは人生レベルで有用だとマナトは考えていた。

appleとかGoogleとかFacebookって聞いたことある?」

「もちろん! 有名ですよね」

「三度目の産業革命の時に特に成長したのがそいつらなんだ」

「えっ……」

1980年代、人類三度目の産業革命のきっかけは、冷戦が終わったことでアメリカの軍事技術(インターネット)が民間産業へ転換されたことだと言われている。

――インターネット? これが世界中に繋がってるの? すごい。

――これって地球の裏側にいる人とリアルタイムで話ができるってこと? unbelievable! まるで魔法じゃない!

――待って、これがあったら、あれもこれも、なんでもできちゃわない? たとえばこういうシステムを作ってさ!

つまり、あの時『革新的な技術によって変化する社会をいち早く想像し、自社主導の新システムを世界のスタンダードとして根付かせた国や企業』が、現在、圧倒的な成功を手にしているのだ。

「そんな前例があったら、誰だって真似しないわけにはいかないだろ?」

「確かに……。appleさんやGoogleさんの成功に倣いたいと思ったら、IT関連の知識を学ばないわけにはいかないですね」

そう。この転換期をモノにしたいと思ったら、常に新しいものを見聞する探求心見知らぬ技術に触れて確かめてみる知的好奇心知らないことを調べるのを面倒くさがらない根気や根性そうして学んだことを自分の生活に取り込んで面白おかしく発展させる創造性や発展性や挑戦力……そういったものが必要不可欠なのだ。

難しい、わからない、めんどくさい、いいから教えてよ……これからの時代、そういった他人の足を引っ張るばかりの輩はどこに行っても会社の荷物になる。昭和なら字が読めて文章を書けて計算ができて長時間働ければよかったが、今はその最低ラインが「スマホのアプリやパソコンのソフトを使いこなして、ネットで最新情報を得ながら、新しいアイデアや楽な手法を常時発掘していく」までに引き上げられているのである。

「なるほど、よくわかりました。マナトさんは先人の賢者に学ぶ理性的なチャレンジャーなのですね!」

「そんなに情熱とか野心があるわけじゃないんだけどな」

「知識や教養を求めるその姿勢が大切なのですよ! パートナーが聡明な方で助かります!」

これからよろしくお願いしますね! と言うイーツは、まるで王に対する臣下のように胸(?)に手を当て頭を下げるのだった。

 

 

■第四次産業革命が来たらこうなる!

・出かけなくても荷物が届く
(自動運転車、ドローン)


・ネットで支払いが完了する
(eコマース、フィンテック)


・調べれば秒で教えてくれる
(人工知能(AI)、5G)


・家事の負担が最低限になる
(IoT、ロボット工学)


・付加価値製品の製造が容易
(3Dプリンター)


・”所有”ではなく”利用”する
(クラウド、サブスクリプション、シェアリング・エコノミー)


・自動運転で目的地に行ける
(自動運転車)


・最速最良街道を爆進できる
(ビッグデータ)

 

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