IoTとかIoHとかIoAとか ~いつまで生きていられるか~

学生、異星人を教育す
イーツ
イーツ

イーツ(異星人)です! パートナーであるマナトさん(高2)に地球のことをあれこれ教わっています!

今日のお話は「IoT」! 一体なんの略でしょうね? 第四次産業革命の根幹に座すものだそうです。

 IoT、IoH、IoA。

 あらゆるものをインターネットに繋いで運用を全部AI任せにする世界。

 企業各社の「既存商品に対するアイデア勝負」。想像力や発想力、知識と知恵と知見の総合格闘技だ!

 

「そういえば、第四次産業革命を語る上で欠かせない工程があるな」

やや上を見上げてマナトが言う。欠かせない工程、とイーツが復唱した。

「それは?」

「IoTだ」

「IoT」

また復唱する。説明がなさすぎてそうすることしかできないのだった。

IoTは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と……訳される……」

「…………」

マナトが思ったことがそのまま移ったものか、イーツは一瞬、「もっとかっこいい和訳できなかったのかな……」と言いたげな顔をした。

その和訳だって決して間違いではないのだろうが、英語を詩的に翻訳するのが仕事の人なら己の誇りにかけてもっと違った言葉をあてがったに違いない。

まあ別に自分がその名をつけたわけではないマナトが気を取り直したように続けた。

「平たく言うと、今までインターネットに繋がっていなかったモノ……つまり、テレビや冷蔵庫、エアコンなんかの家電製品、時計、電子辞書とかの電子機器、自動車、バスといった乗り物や、病院、学校、工場、ビルみたいな設備・建物を繋いで日々コツコツとデータを集め、サーバー上で相互に情報交換して、浮かび上がってきたデータを処理、分析し、幅広く応用しようというシステムだ」

「その説明が示すものをIとoとTの三文字に集約したのはいかにも素晴らしいことだと思います!」

イーツ渾身の本心だった。地球人はなんでもよく略す。

「第四次産業革命は、このIoTであらゆるものをインターネットに繋いで運用を全部AI任せにする、という流れがもたらす境地なんだ」

「なるほど!」

イーツは納得した。つまり、革命の本質のすべてがここに詰まっているというわけだ。

「で、この時活躍する(というか、もっとも必要となる)のが5Gなんだけど」

「あ、知ってます! ワクチンを打つと人間の体内に宿るんですよね!」

「いや、そういう事実はない。5Gは高速大容量、低遅延、多数同時接続でスムーズなデータのやり取りを可能にするだけの通信システムだ」

えぇ……、とイーツが残念そうな顔をした。この異星人はどこからそういう情報を仕入れてくるのだろうか。

「で、集めた情報、得られたビッグデータを処理、変換、分析、応用してシステムを構築し、個々の分野に特化したAI(人工知能)を作って、それにすべての制御や管理を移行する――っていうのが、俺たちがアニメでよく見る「近未来の生活」までの大筋の流れになる」

「そうやって鉄腕アトムやドラえもんや銀河鉄道999の世界になるんですね!」

「すっごい笑顔」

異星人も日本のアニメがめっさ好きなようだった。

さすがに空飛ぶ人型ロボットや四次元ポケット、宇宙を走る列車が実現するのはまだまだ先だが、

――家中の設備や家電製品をインターネットに繋ぐスマートハウス(IoT×家電・電気機器)

――街全体をインターネットと繋ぎ、インフラとサービスを効率的に管理・運用するスマートシティ(IoT×外食・食品・小売り)

――工場にある各機械や生産ラインなどを繋いで相互通信させ、より効率的な体制を実現して、生産・品質向上を図るスマート工場(スマートファクトリー)(IoT×工場)

――ドローンや無人運転車の活用による配送で物流を革命するスマート物流(IoT×物流)

――日射量や土壌のセンサー感知、水やり・肥料のタイミングや量、ハウス内の温度調節・空調調節などをするスマート農業(スマートアグリ)(IoT×農業・酪農)

といった数々の取り組みは、間違いなく近未来の先駆けとなるだろう。

人間は楽と効率を極めんとする生き物だ。それが可能なのであれば「コンピューターが自分で判断して勝手に動いてくれるシステム」が欲しい。つまり機械にあらゆることをやらせて自分たちは寝ていたい。今、技術的にようやく「それ」に手が届く時が来た。そのため、(エンジニアが)日々頑張っているわけだ。

「デッドスペースを活用する収納術の亜種というか、要は既存の商品に付加価値を付与しまくりたいんだな。ただそこにあるだけのものに機能を追加してもっと働いてもらおうという」

「付加価値を付与……」

実際、それがIoTの強みにして最大の使命なのだ。

たとえば、家や幼稚園や学校に置いたカメラやセンサーでどこにいても子供や年老いた親や無人の家の無事を見守れるようになるとか。

たとえば、ペットにウェアラブルデバイスを装着させて体調の変化を早期に発見し、早期に治療できるようになるとか。

たとえば、AIスピーカーと連携して、口頭の指示だけでお風呂にお湯を入れたりエアコンや照明を点けさせるとか。

たとえば、IoT機器搭載歯ブラシで正しく歯磨きができているかをチェックしたり、フライパンに搭載されたセンサーで中まで火が通ったかを確認できるようになるとか。

「会社の全データをAIに入力して、社内のあらゆる情報を網羅したAIに効率的な手順を提示してもらい、それによって生産性を向上させるとか、コストを削減してもらう、とかな」

自分たちの代わりにロボットにやってほしいことなんて枚挙にいとまがない。優秀なAIやロボットを作って増やして頼っていく。それがIoT……第四次産業革命の根幹なのだ。

「地球は今、丁度その過渡期なのですね」

「そう。それもこれもすべてエンジニアの人たちの功績だ」

「マナトさんの目標の職業ですね!」

「まあ。とはいえ、今はただの一般人である俺にできることは、新しい商品が世に出るたびきちんと取説書を読んで正しい使い方を理解し、くれぐれも事故を起こさないってことだけだが」

「それは当たり前のことでは?」

「……歳がイった人ほどこれができないんだ」

ああ……とイーツが力なく目をそらした。老人の「新しいものへの馴染めなさ」は彼の星でも同じようだった。

「しかし、IoTに深みを与えるのは、技術力というより、「こうして欲しい」「こうなればいいな」という発想力や応用力なんですね」

「そうだな。IoTは企業各社の「既存商品に対するアイデア勝負」みたいなところがある。想像力や発想力、知識と知恵と知見の総合格闘技というか」

アイデアを提示すれば、縮小・軽量化した各種センサーと通信チップでほぼほぼなんでもできてしまうのが現在の技術力だ。企業によっては技術者よりもアイデアを重視するところもあるかもしれない。

IoTの試みは始まったばかりで、今はまだ、どの分野にも支配的な企業がいない。つまり、AmazonやGoogleみたいな「大手」がいないんだ」

要するに、アイデアとそれを実現できる技術力――このふたつさえあれば、どんな企業にも急成長のチャンスがあるということだ。

「おおぉ! それはマナトさんにもゴールデンチャンスがあるということじゃないですか!」

「いやだから、俺は特に現状に不満がないから、あんまり新しいことを考えつけないんだよ」

「聞いています! だから僕が異星人目線で色々なことをマナトさんに提案するって約束したじゃないですか!」

「お、おう……」

「僕たちは一度した約束は忘れない種族なんです! 楽しみにしていてくださいね!」

おう、とマナトが不思議な表情で笑った。

「まあ技術的に完成した機器類があっても、電力、電波、通信事情を改善しなければ実現できなかったりするし(5Gが必要)、高度なITエンジニア、データサイエンティストは2030年になっても人材不足の予定だし、人間が機器や技術に適応しきれないことによるヒューマンエラーが頻発するのはどうあっても避けられないし、家電にはウイルスソフトがないからサイバー攻撃やハッキングをされたらシャレにならないっていう問題もあるんだけど」

「問題だらけですね!?」

「過渡期はこんなもんだ」

人類は徐々に、あるいは急激に第四次産業革命に向かっているが、現在は未だに第三次産業革命の最中であるという見方もある。現在抱える問題点をすべて解決できる技術力を得た時が「第四次産業革命」のはじまりになるのかもしれない。

「ところで、IoTと似たようなものにIoHという境地がある」

「H」

何の略だ。イーツが真顔になった。候補が多すぎる。

「HはヒューマンのHだよ。IoHは「Internet of Human」の略で、まあ、「ヒトのインターネット」ってことになる」

「…………。モノのように人がインターネットに繋がるということですか?」

センスよ……と言いたげな沈黙のあと、イーツが尋ねた。

「そう。人間に関する諸々のデータを活用することで、仕事の効率を高めたり仕事現場での安全性向上につなげる……みたいな世界だったかな」

「はあ……。人間は多種多様であることに意義があると思っていましたが、人間のデータを活用するということは、大標準を決めてそれに合わせる、みたいな感じになっていくんでしょうか」

「個性や種族特性や多様性を否定するわけではないと思うぞ。むしろ、人間の動きや身体の機能に関する情報を幅広く集めて、各種サービスの向上に役立てる、くらいの意味合いだと思う」

「なるほど」

「そしてIoAという境地もある」

「A」

イーツは考えることをやめた。マナトが苦笑して答えた。

「AはアビリティのA。「Internet of Ability」でIoA。「能力のインターネット」ってとこか」

「能力を……インターネットに?」

イーツがぱちぱちと瞬いた。

「そう。人間の知覚能力、認知能力、学習能力、身体能力なんかをインターネットとテクノロジーに繋げて強化するわけだ」

「……ちょっと想像できません」

「俺もだ。自然や害ある人間に対する警戒感が向上したり、勉強における理解力が増したり、速く走れるようになったり重いものを軽々と持てるようになったりするのかな、とは思うけど。うまくいけば病気の人や発達障害者の救いになるかもしれない」

「ああ、それは素敵ですね!」

「将来的には、人間×機械という組み合わせを越えた、人間×人間という組み合わせが実現する可能性もあるらしい。別の人にジャックインしてその体を動かすとか」

「地球の秩序が崩れませんか!?」

宇宙の秩序が崩れる的にイーツが叫んだ。

まあその頃にはもう生きていないだろうから俺は理解することを諦めてるよとマナトは笑った。

 

 

 

■IoTとは

・「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」と訳される

・今までインターネットに繋がっていなかったモノ(家電製品、電子機器、乗り物や、設備・建物)を繋いで日々そのデータを集め、サーバー上で相互に情報交換し、浮かび上がってきたデータを処理、分析して、幅広く応用していくシステム


・集めた情報、得られたビッグデータを処理、変換、分析、応用してシステムを構築し、個々の分野に特化したAI(人工知能)を作って、すべての制御や管理をAIに移行するのが最終目的


・この時もっとも必要となるのが5G通信システム(高速大容量、低遅延、多数同時接続)である
■IoT(モノの有益化)は企業各社の「既存商品に対するアイデア勝負」

・IoTの功労者は縮小・軽量化した各種センサー&通信チップ。時計などのちいさな製品にも搭載可能で、小さくても充分に性能を発揮する


・多くの人がスマホを持っているので、スマホを起点にアプリを構築できるという強い土台がある


・収集したビッグデータを活用することで消費者ニーズを鮮明にし、新しいビジネスを多数生み出していく


・想像力と発想力、知恵と知見の総合格闘技。いいアイデアを提供できると思ったらプレゼン持って企業突撃も視野に
■IoTの課題

・技術的に完成した機器類があっても、電力、電波、通信事情を改善しなければ実現できない(5Gが必要)


・高度なITエンジニア、データサイエンティストは2030年になっても人材不足


・人間がIoT機器やその技術に適応しきれないことによるヒューマンエラー問題


・家電にはウイルスソフトがないので、サイバー攻撃やハッキングをされたらシャレにならない

(政府は「IoT機器に不正アクセスを防ぐ機能の実装を2020年4月から義務化する」とし、セキュリティ対策を有しているIoT機器のみ販売を許可している)
■IoHとは(もうちょっと待たなければいけない)

・「Internet of Human」の略で、「ヒトのインターネット」と訳される


・人がインターネットにつながり、人間の動きや身体の機能に関する情報を取得し、各種サービスの向上に役立てる
■IoAとは(かなり待たなければいけない)

・「Internet of Ability」の略で、「能力のインターネット」と訳される


・人間に本来備わっている、知覚能力、認知能力、学習能力、身体能力、存在感などの能力(アビリティ)をインターネットとテクノロジーにつなげ、強化する(わかりやすい例で言えば、重い荷物を持ち運ぶ際に体への負担を軽減するロボティックスーツなど)


・さらにAI(人工知能)と組み合わせることで、望外の能力向上が可能となる


・将来的には、人間×機械という組み合わせを越えた、人間×人間という組み合わせが実現する可能性もある

 

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