マケドニア王ミシェイルによる「暗黒竜と光の剣」アテンダント●第六章「レフカンディの罠」

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オレルアンを解放した同盟軍は、ニーナ王女という絶対的かつこれ以上ない正統な旗頭を得、アカネイアパレスの奪還を目指す。

軍を南進、向かうはアカネイアへの中継地となるレフカンディだ。

その谷には無数の砦が築かれ、我が国の白騎士団が待ち構えていた。

 

白騎士団を率いるのは俺の妹のミネルバだ。

マケドニア王国の第一王女であるミネルバは、赤い髪を持ち赤い鎧を好むその凛々しさから「赤い竜騎士」と呼ばれていた。

父に似ず俺に似て賢明なミネルバは、マケドニアがドルーア帝国に加担することに強固な反対の意を示していた。もちろんアカネイアへの出兵にもオレルアンの侵攻に対してもだ。

だから俺は、ミネルバが可愛がっている下の妹のマリアをグルニアに人質に出すことでミネルバの行動を牽制していた。

余計な気を起こさないよう、正義の名のもとに全てを台無しにしないように。

 

 

 

 

…そもそもの話になるが、「共にアカネイアを滅ぼそう」というメディウスからの提案を受けたのは、俺ではなく俺の父王だった。

父は断った。人間らしく、常識的に。

そしてアカネイアに上申した。

「メディウスがこんなことを言ってきました。放っておいては危険です。共にドルーアを滅ぼしましょう」と。

それは人間として真っ当な判断だっただろう。俺から見ても何一つ間違ってはいない。

だが俺にはわかっていた。

アカネイアが「わかった」と返すことを。

「今から軍備を整える。その間、お前たちでできるだけドルーアの戦力を削っておけ」と言うことを。

そして結局、一兵の兵も寄越さないことを…。

 

アカネイアの貴族共は、建国から今まで、一貫して我がマケドニア王国を「辺境の蛮族の地」と蔑み続けている。

あれをしろ。それをするな。金を出せ。作物を寄越せ。いつもいつも、ずっとずっと。

このままでは、マケドニアだけが搾取され、マケドニアだけが滅びることになる。

そんな誰の目にも明らかなことを、愚かな父王だけが理解しようとしない。

だから俺は父を殺した。自らが王となり、その権限でメディウスに呼応して憎き傲慢なアカネイアを滅ぼそうと決意した。

アカネイアを滅ぼした後にグルニアのカミュと組んでメディウスを倒せばいい。そう計画した上で行動を起こしたのだ。

一時的に人類の敵になろうとも、マケドニアの民だけは守る。それが俺の行動理念だった。

 

潔癖なミネルバにわかってもらおうとは思わない。

一度は話してみるべきだったかもしれないが、打ち明けた結果、悩みに悩んだ末に「やはり反対です」と主張される方が疲れる。

だから、大人しくしていろとばかりに常に上から押さえつけていたのだ。

余計な気を起こさないよう、正義の名のもとに全てを台無しにしないように。

 

だが、やはりそれでは納得できなかったのだろう。

ただでさえ反戦派だったミネルバは、「マルス王子率いる同盟軍を狭い難所の上空から襲撃する」という作戦に納得できず、部下であるパオラ、カチュア、エストと共に、レフカンディの戦場を放棄してしまった。

報告を受けた俺は、武人としてミネルバの気持ちがわからなくもないだけに、海より深いため息をついたものだ。

…これはやはり俺が責任を取らなければならないのだろうな。

 

一方、知らぬ間に上空からの強襲を免れていたマルス王子は、なぜか村の枯れた老人とかを仲間にしつつ狭い峡谷をズンズンと進んでいた。

実はその老人はメディウスと同じ竜人族…「マムクート」だったのだが、マルス王子がその老人を
竜として戦場に投入することが一度としてなかったため、結局我らは彼らの本当の戦力をついぞ知ることはなかったのである。

 

 

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