ついにメディウスの居城に辿り着いたマルス王子たち。
くっら(※暗)。そこら辺の穴ぐらかよ。竜って明るいところがダメだったのか。まあ夜目が利くのだろうな。
敵の企みかマルス王子たちの作戦か、城内で派手に散り散りになってしまった同盟軍だが、あいつらはもともと散り散りでも問題なく強い。
あちこちそれぞれで目の前の敵を倒し、最終的に全員が合流した時には、もはや敵はメディウスだけという状態になっていた。
…メディウスは元は地竜族だったそうだが、現在では暗黒竜にカテゴライズされるという。
現在の己の有り様が属性を決めるみたいなアレなのだろうか? そう考えるとかなり純粋な生き物なのだな。
そのため、神秘による攻撃…たとえばアカネイアの三神器であるメリクル(剣)、グラディウス(槍)、パルティア(弓)やアリティアの神剣ファルシオンによる攻撃しか届かないらしい。
まあ逆に言えばそれらの攻撃は通るし普通に全部持っているので、なんの心配もなかったが。
マルス王子たちの姿を認め、竜の姿を取るメディウス。
でっか。さすがに竜騎士が乗る飛竜とは比べ物にならない。
だが、「不完全」とまではいかないが「本調子でない」のは確かなのだろう。
メディウスの大きな竜の身体は、自分の負の感情の大きさに耐えられないようでも追いつかないようでもあった。
…これはいつか誰かから語られる物語だが、かつてのメディウスは秩序を守る心正しい竜だったという。
だが、竜族が自らの獣性を封じるため人間の姿を取るようになると、人間たちは「力を失った哀れな存在」としてマムクートを蔑み、意味もなく迫害するようになったそうだ。
そう考えると、メディウスがドルーア帝国を興してマムクートによる人間の支配を企てるようになったのも無理からぬことではある。
今日の事態を引き起こしたのは、竜であり、人間であり…。
そしてやはり、竜以上に人間のせいなのである。
チキという幼い神竜を庇護するだけに、今では竜の親和性や善性を信じることができるマルス王子だったが、戦の根源は断たなければならない。
マルス王子は多くの仲間たちの助けを受けつつ、取り戻した神剣ファルシオンで、まるで祈るようにメディウスを斬った。
神竜の牙から作られたというファルシオンの刃は、竜の最後を見取るかのように、いつまでも輝いていた。