マケドニア王ミシェイルによる「暗黒竜と光の剣」アテンダント●序章「物語開始までのなんやかんや」

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俺の名前はミシェイル

つい先日、アカネイア暦597年に復活した暗黒竜メディウスに与したマケドニアの王だ。

 

メディウスは人の姿を取る竜人族…いわゆる「マムクート」であり、およそ100年ほど前に人類を蹂躙した記録が残っている。

その結果として神剣ファルシオンを手にした英雄アンリに打ち倒されたのは誰もが知るところだろう。

 

対竜戦線で団結した当時の人間たちは、メディウス討伐後、アカネイア聖王国オレルアン王国アリティア王国グルニア王国マケドニア王国、アリティアから分離独立したグラ王国、最後に辺境にタリス王国という7王国を興した。

時は流れ、その一角であるマケドニアの現王が俺というわけだ。

 

要するにこの大陸はメディウスに蹂躙された史実によって反骨精神的に繁栄してきたわけで、ここまで竜に対する殺意マシマシの世に再び復活してくるメディウスはまこと見上げた根性であると言わざるを得ない。

…思えばメディウスは一体なにが悔しくてこうも人類の根絶に励むのだろうか。

一度聞いて、こちらが譲歩できるところは譲歩すべきなのかもしれないな。

 

 

さて、先程も言ったが、英雄アンリに打ち倒されておよそ100年、メディウスは復活した(スパンが短すぎるとは思う。もうすこしゆとりを持ったらどうか)。

奴の目的は人類の粛清…近視眼的に言えばアカネイア大陸の宗主国であるアカネイア聖王国を滅ぼすことにあるらしい。

100年前もそうだったというし、一体過去に何があったのだろうな。

 

「竜人族」とはよくいったもので、過去の経験から学んだメディウスは、今生、「竜の力」による人間の圧殺ではなく「人の知恵」による根回しで人類の結託を崩しにかかってきた。

つまり、かねてからアカネイア聖王国に対する不満を燻らせていた我が国マケドニアとグルニアに、「共にアカネイアを滅ぼさないか」と連合話を持ちかけてきたのである。マジで誰の入れ知恵だ。

 

人間側としては、人類を滅ぼすことをスローガンとして掲げる竜と手を組むなど、根本的にありえない。

打診を受けたのが我が国だけなら絶対に呼応しなかったし、今代、情けないほど気弱な王を持つグルニアとてそうだっただろう。

 

だがメディウスは、マケドニアとグルニアに話を持ってくる前に、魔道の学府であるカダイン、その大司祭ガーネフとの間に協力体制を築いてみせていた。

要するに「人間に敵対する人間がいる」という事実と前例を我々に示してみせたのだ。

そうとなれば話は違った。

 

もともとマケドニアとグルニアは、長い間アカネイアに煮え湯を飲まされ続けてきた国だ。

竜と、カダインの魔道兵団。そこに我が国の竜騎士団とグルニアの黒騎士団が加われば、余とか麿とか言い出しそうな貴族が数多生息する(※想像)アカネイアになど、負ける方が難しい。

 

結局、各々の事情を考慮して、マケドニアとグルニアは心を決めた。

そうした流れで「竜と人の連合軍」は成り、我らはアカネイア聖王国に宣戦布告したのである。

 

 

 

 

アカネイア暦602年、アカネイア聖王国は王女であるニーナを残して滅亡した。

王女がひとり生き残ったのは、グルニアの名将カミュが彼女を庇護したからだと言われている。

それによってカミュはメディウスの怒りを買い、前線から外されてしまったという。

惚れたのか惚れられたのかは知らないが、まったく面倒な芽を残してくれたものだ。

だが俺は「竜に与した人間」の多少のラフプレイは大目に見る気でいた。いつか俺も似たようなことをしでかさないとも限らないからな。

 

宗主国アカネイアを助けるために駆けつけた、英雄アンリの子孫であり神剣ファルシオンの継承者であるアリティア王コーネリアスは、あえなく死亡した。

これはカミュが率いるグルニア軍と交戦した結果というより、アリティアの兄弟国であるグラ王国の裏切りによる敗死であったと伝えられる。

つまるところグラも我々同様に竜に与した国ということになるのだが、俺はこれについてはどうにも素直に迎合できないでいた。

おそらく最初から竜側に組していた我々と違い、「味方のふりをして、もっとも重要な場面で裏切った」という小賢しさが癇に障るのだろう(話を聞くに、カミュも相当怒っていたという)。

 

どうあれ、弟国グラの裏切りと侵攻を受けた兄国、アカネイアの盾でありメディウスを倒す剣の王国である英雄アンリの国アリティアは、守るべきアカネイア聖王国より先に滅亡した。

その際、メディウスを倒し得る神器、神剣ファルシオンが行方不明になったという事実は意識の端に留めておかなければならないだろう。

すでに見つかり回収されている可能性もあるが、使えるか使えないかは別として、可能であれば手に入れたい逸品だからな。

 

 

コーネリアス王にはマルスという嫡子がいたが、14歳という若さゆえ決起を諦め、幾人かの騎士団と共に落ち延びたという。

その彼が落ち延びた場所こそ、この物語のはじまりの地、極東の新興国家であるタリス王国だった。

 

 

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→第一章「マルスの旅立ち」

 

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