さて、とうとうこの日が来た。
マルス王子たちが我が国マケドニアに攻め込んでくる日がだ。
地理的にマケドニアはグルニアから海を挟んですぐ（？）だし、我が国の竜騎士団や天馬騎士団はどこにでも飛んでいくから、これを放置しておくのはまずいと思ったのだろう。
だが、マルス王子たちがマケドニアに来る最大の理由は、大賢者ガトーが「星と光のオーブを持って来なさい」と指定した場所がマケドニアだったからだ。
我が国を叩くのはそのついでと言わんばかりの流れに、頼むからそんな待ち合わせは他所でしろとドリアンを投げつけたくなった。
開戦前、俺は大賢者ガトーの家を訪れていた。言ってなかったが、ご近所さんのよしみで旧知の仲なのだ。
ガトーは、「お前とミネルバが協力して国を治めれば、マケドニアはいずれアカネイアをも超える大国になっただろうに」と俺の道の外しぶりを惜しんでいた。
俺が父を殺してドルーアに加担した事情を知っていて尚、「お前の苦渋の決断は理解できる。だがそれでも、どうしてマルス王子のように誠実に生きられなかったのか」と嘆いているようだった。
ここまできたら他に言うこともなく、俺は、この老人は20年前も老人だったが今も老人だな、と思いながら、
「マルスだけは俺が仕留める。それがマケドニア王たる俺の最後の意地だ」
と返しておいた。
マルス王子に勝てたら、俺がガーネフとメディウスを仕留める。
マルス王子が勝ったら、彼がガーネフとメディウスを仕留める。
それを決めるだけの、これは戦いだった。
…これが最後とばかりに華々しく天空を駆ける騎士たち。
久しぶりに会う妹のミネルバ、そしてマリア。
建国の英雄アイオテが有していた「オートクレール」と「アイオテの盾」のぶつかり合い。
…マルス王子、「スターライトの魔道書」は手に入れられたか？
険しい山の中にある秘密の店には入れたか？
…この戦いによって、マルス王子はアカネイア勢とドルーア勢に二分された人間たちを、完全にひとつに戻したのである。
