マケドニア王ミシェイルによる「暗黒竜と光の剣」アテンダント●第十六章「ブラックナイツ・カミュ」

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ガーネフは「ファルシオンが欲しくばテーベまで来い」と言ったが、北から順にテーベ、ラーマン、グルニアという地理上、二正面作戦を防ぐために、「まずはグルニアを落としてすっきりしてからテーベに行こう」ということになった。

 

…ドルーア帝国に加担しているという点では同じだが、我がマケドニアが覚悟と信念を持って立ち上がったのに対し、グルニアは国王ルイの気弱さによって「断りきれずに同盟を受け容れた」クチだ。

双子の王子と王女をカダインに人質に出したのもメディウスとガーネフをひたすらに恐れたからで、現王は現在では数々の心労がたたってずっと病に伏しているというのだから、「三英雄のひとりが建てた誉れ高き騎士の国」の国風にマッチしないことこの上なかった。

ワーレン、レフカンディ、ディール城、アリティア城、アカネイアパレスなど各地に派遣された高名な将軍たちは、地の利も現地の人間の協力もなく、そのことごとくが孤立の果てにマルス王子たちに打ち倒されている。

そのような事情で、今やグルニア本国にいる騎士は「黒騎士団を率いるカミュとその他少し」という有様になっていた。

 

 

 

 

グルニアへの進軍中、マルス王子はカミュに助けられたというニーナ王女の話を聞いていた。

3年前、カミュが率いる部隊にアカネイアパレスを占領されたこと。

乗り込んできたドルーアの将兵たちによって父母が殺され、次は自分というその時、カミュがかばってくれたこと。

ドルーアを恐れることなく守ってくれて、最終的にはオレルアンに逃がしてくれたこと。

「憎んだこともあります。でも、彼は私の恩人なのです。できれば戦いたくありません。彼にもう一度会いたいのです…」

王女の言葉の端々からカミュへの切ない感情が伝わってくる。なるほど、惚れられたのはカミュの方だったのか。

 

まあそれはそれとしてグルニア戦の火蓋は切って落とされた(無情)。

森にジェネラル、平原にパラディンというクソ攻めにくい配置の敵を、ものともせずに蹴散らしていくマルス王子。大陸最強かよ。

戦いの最中、ミネルバの腹心である天馬騎士エストが飛来した。彼女の言い分はこうだ。

「グルニアに奪われたアカネイアの宝剣メリクルソードを取り返しに行ったんだけど、捕まっちゃって! でもカミュって名前の若い騎士が助けてくれて、何とかここまで逃げてくることができたんですー(´∀`)」

 

自国の罪や不利を知りつつ、グルニアの民を守るため最後までグルニアから動かなかった国の重鎮、ロレンス将軍が、旧知のタリス王の娘であるシーダ姫に説得されてマルス王子の同盟軍に加わったのは、いい流れだったのか悪い流れだったのか。

 

ついにグルニア城にたどり着いたマルス王子は、城を守るカミュに剣を収めるよう伝えたが、カミュの答えは以下の通りだった。

「祖国がドルーアに加担した以上、栄光あるグルニア黒騎士団として最後まで戦う義務がある」

やはりな。ロレンス将軍がマルス王子に下ったことでグルニアの民を守る人材は確保された。罪はすべて自分が背負っていくという心積もりなのだろう。

カミュは「ドルーアを打ち倒すために力を貸して欲しい」というニーナ王女の懇願をも拒み、アカネイアの宝槍グラディウスで挑んできたが、今のマルス王子の軍は勝つ気もない人間が勝てる相手ではない。

「ニーナ…どうか幸せになってくれ」

結局、そんな言葉を残してカミュは倒れた。

グルニア王国陥落の瞬間だった。

 

…聞いた話だが、アカネイア王家のファイアーエムブレムには悲劇が付きまとうらしい。

100年前、ファイアーエムブレムを託された英雄アンリは、アカネイアのアルテミス王女のために戦ったが、戦後、愛し合うふたりが結ばれることはなかった。

ファイアーエムブレムにより王家を回復できた時、その代償として最も愛する者を失う。

それがエムブレムにまつわる伝説、「アルテミスの定め」なのだそうだ。

ニーナ王女がカミュを失うことになったのも、そんな目に見えぬ運命の縛りに囚われてのことだったのかもしれないな。

 

 

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