お父様からいただいたパラセールを使って始まりの台地から降りたリンクは、壊れた家屋や古びた旗がはためく宿場町跡地を「わー」「すげー」と興味深そうに眺めながら孤独な旅を続けます。
北海道みたいな景色を見ながら、お父様以外の人間を見て「人いるんだ…」と目を丸くしたり、見つけた祠に「こんにちはーお邪魔しまーす!」と元気よく入ったり、散策ついでにシーカータワーを起動したり、馬宿を見て驚いたり、赤い月に目を丸くしたり、唐突なガーディアンにビビリ倒したりと、実に自由に進んでいきます。
そんな彼が奇妙な生物(※失礼)に出会ったのは、目指すカカリコ村付近のことでした。
その方の名はボックリン様。コログ族であり、コログの森の音楽家なのだとか。
コログ族といえば普通の人間には見えない森妖精です。リンクは生まれついての勇者なので小さな頃から見えていたはずですが、今はそういったことすら頭からスコンと抜け落ちている状態です。
「でっか、うわ何!? …本当に何!?」
言葉もないリンクに対し、100年ぶりに自分を見える人に出会ったというボックリン様は「君ちん、ボクちんが見えるの!?」と大興奮。100年前に見えてた人ってそれ絶対100年前のリンクですよね?
ボックリン様は「大事なマラカスを隠されちゃったの、あれがないと力が使えないの、取り返してちょうだい」みたいなことをリンクにお願いします。私は妖精との適切な付き合い方を知らないのですが(神隠しとかされないでしょうか?)、昔から妖精や精霊が見えていたリンクは軽く「いいよ」と安請け合い。彼のいいところ、不思議なところ、優しさ、無邪気さ、人の良さがフルスロットルです。
魔物たちからサクッとマラカスを取り返したリンクは、ちいさなコログたちが持ち出したという「マラカスの中に入ってたコログの実」を返してさらにボックリン様のマラカスを完璧な状態に戻す手伝いも完璧にこなします。
代わりにボックリン様はリンクの荷物ポーチを大きくしてくださり、リンクはお父様からパラセールをもらった時ばりに喜びました。
ここまできたら一直線。ようやくゴールのカカリコ村にたどり着きます。いえ、私が語らないだけで永遠に寄り道したのですけどね。
カカリコ村は古代の技術に詳しいシーカー族の村です。…ああ、100年前と変わっていません。
村の人たちは、珍しい旅人が腰に帯びたもの、すなわちリンクのシーカーストーンを見て、「それをどちらで?」「それは選ばれし者の証」「ではあなたが」「ずっとあなた様をお待ち申し上げておりました」「あなた様にお会いできるなんて長生きはするものですね」とベルトコンベアのように話をスムーズに進めていきます。さすが叡智の一族です。
でも、シーカー族といえども若い人たちにはそれほど勇者への待望感や大厄災の実感がないようでした。それだけの年月が経っているのですものね。
そんな中、リンクに反応する若い女性もいました。彼女の名前はパーヤ。なんだか若い頃のインパにそっくりですが…。
え、インパの孫!? お子さんのみならずお孫さんまで生まれて…!? どうしましょう、今からでも出産祝いを贈りたいのですが!!
そして、パーヤに通された木の扉、シーカー族特有の屋敷の奥、座布団の上に座っていたのは…。
「やっと目覚めおったか。久しいのう」
インパ…! なんて可愛いおばあさんになっているのでしょう! ウツシエ! リンク、記念ウツシエを撮ってください!(※この時点では未実装)
「すっかり年を取ってしまったが、名前くらいは覚えておるじゃろう?」
インパが言いますが、リンクは永遠にキョトン顔でした。
それあるを予期していたのか、インパは「そなた、やはり記憶が…。いや、今はむしろそれが救いかもしれん…」と正しく彼の状態を察します。さすが叡智の一族です(二度目)。
インパは、「100年前、ゼルダ様は最後の希望としてお前を聖なる眠りにつかせ、お一人でガノンの元に向かわれた。わしはゼルダ様がそなたに向けた最後の言葉を託されたのじゃ。その言葉を伝える時を100年待っていた」と説明します。そうそう、そうでしたね。
「だが、それを聞くならそなたも命を懸ける覚悟を決めねばならん。さすがに記憶を失った今のそなたに押し付けることはできんからの。姫様のお言葉を聞く覚悟が決まったらまた来るがいい」
インパはそう言ってリンクに選択肢を与えてくれました。
そうですよね。彼は勇気の神の寵愛を受ける当代の勇者ですが、今はその記憶がないのですからさすがに無理強いはできません。ありがとうインパ、彼の気持ちを尊重してくれて…。
しかし当のリンクはインパの気遣いを軽くスルーし、「全然覚えてないんだけど、俺ってどういう経緯で100年も寝てたの?」とフリーダムかつダチ感覚でした。
インパはインパで「わしとわしの姉プルアがそなたを眠りに付かせたんじゃ」と無駄に自慢げですしね。
リンクが「完遂できるかどうかわからないけど、可能なら助けたいとは思ってるよ。だから教えて」と言うと、インパは念には念を入れようとしたのか、よりにもよって1万年前の話から語り始めました。
・ハイラルは、ガノンという名の厄災に見舞われる度に「勇者の魂を持つ者(リンク)」と「女神の血を引く聖なる姫(ゼルダ)」の力によって平穏を取り戻すという歴史を繰り返してきた
・1万年前のハイラルは高度な文明技術を持っており、からくりの兵「ガーディアン」と四体の巨大な獣「神獣」、そして「退魔の剣を持つ勇者」と「封印の力を持つ巫女姫」がガノンを封印するという勝ちパターンを作り出した
・1万年前の伝説に倣い100年前もそうやって厄災を倒そうとしたが、神獣を奪われ、ガーディアンを操られ、勇者(リンク)が倒れ、姫(ゼルダ)は封印の力を使えず、という四大厄で、必勝のパターンを踏襲できなかった
「要するに残念なことが重なりまくっちゃったんだね。で、ゼルダ姫が残した言葉って?」
団子を食べつつ訊ねるリンクは無限にフレンドリーです。始まりの台地でお父様と一緒にいた頃を思い出しますね。
若干こめかみをヒクつかせつつインパは答えました。
「姫様が残した言葉は『四体の神獣を解放せよ』。あれがないと厄災に相対することが困難だからのう」
「神獣を解放って、何をどうすればいいの?」
「ガノンに操られて暴れている神獣を止めるのじゃ。具体的には神獣の中に入ってコントロールを奪えばいい」
…暴れる神獣に乗り込めだなんて、必要なこととはいえ、我ながら大変なことを頼んでしまいました。ごめんなさいリンク、せっかく蘇生したのにまたあなたを危険な目に
「わかった」
軽く了承してくれました。
「神獣の操者はそれぞれゴロン族、リト族、ゾーラ族、ゲルド族の代表であり、100年前から今に至るまで英雄視されている。各部族では失礼のないようにな」「あとそのシーカーストーンはまだ完全ではない。ハテノ村の古代研究所にいるわしの姉なら力を解放できるだろうから行っておけ」「それから世界にはよりにもよって厄災ガノンに忠誠を誓うイーガ団というシーカー族がいる。遭遇したら気をつけろよ」
「畳み掛けるじゃん」
とりあえずインパの姉がいるハテノ村古代研究所に行くことを決め、リンクは団子を頬張り続けます。シーカー族のお団子、美味しいですよね。どうか思う存分食べて英気を養ってください。
今も昔も、いっぱい食べるあなたが大好きですよ。
ブレワイアテンダント6→ゼルダの道しるべ